「勇気凛々」りんこのブログ

長年勤めた外資系の会社をいきなり退職して会社員脱出!日々思ったことを書いています。

男女逆転「大奥」

先日、マンションの隣人と食事をした際、よしながふみさん作コミック「大奥」について盛り上がった。

ご存じない方のために簡単に設定について説明を。

春日の局が作った将軍のハーレムである歴史上実在する「大奥」の話をベースに作った創作(男女逆転)。男性のみがかかる不治の伝染病「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」のために男性の数がどんどん減少したため、将軍家も男子継承が出来なくなり、女性を将軍とした男女逆転の大奥が出来る、というある意味荒唐無稽なストーリー。物語は江戸時代にわたって続いている。柴咲コウ二宮和也 出演で映画化されたことでも有名。

これが面白い第一は、誰でも知っている歴史的史実がきちんと盛り込まれている点。例えば、八代将軍吉宗は、即位後に大奥の美女を選ばせる。家来は世継ぎのための側室か、と勇んで選んだところ、選ばれた美女たちは、嫁に行けるだろうからと暇を出される。財政を立て直すためのコスト削減だった、という逸話であるが、コミックでは、こちらも選ばれた美男達が、世継ぎを作れば出世できると喜んで集まってきたところ、暇を出され、悔しがる場面が出てくる。創作を含みながらも、忠実に史実を盛り込む部分が多くあるため、読んでいると、「まんが日本の歴史」を読んでいる気分と、エンターテインメントのコミックを読んでいる気分とが混ぜ合わさって、他のコミックにはない不思議な読後感がある。

もう一つは、代々の将軍たちのキャラをきちんと描き分けているところ。「和服」「ほぼ同じ髪型」「将軍の名前が似ている」という制約の中、どれもが目の大きい美男美女ではない顔立ちの特徴を作ることで、混乱せずに無理なくストーリーをたどっていける。

「男女逆転」のハーレムという、史実から考えるとあり得ない設定(日本だけではなく世界でも)なのに、これだけ人気が出たのはなぜか。

 

思うに、そもそも、実在していた「大奥」がとてもヒトの根源的で馬鹿らしくて面白いからだ。

「男子継承」のため、男の子がほしい。だから、将軍に女性に興味をもってほしい。ということで、沢山の女性を集める。集めた中から、選ぶ、ということで将軍の興味をひくということを春日の局は考えたのだ。それには、乳児の死亡率が高かった当時、また、陰謀が渦巻き危険があった当時、継嗣がいないというリスクを減らすために複数の男子がほしいということもあった。

それは、自分のDNAを残すためにハーレムを作っている動物と同じ考え方で、形式を重んじた当時、このようなものを日本で堂々と作ったこと。

また、「男女逆転」していてもなお、将軍(女性)の寵愛を受けた側室(男性)や子の父親とされた男性が権力を握ったり、それを邪魔しようとしたりと、醜い人間の性が起こるところ。つまり、醜い愛憎の史実は大奥が女性で構成されていたからではない、という人間の悲しいところ。

ぜひ、これを読んで不思議な気持ちを味わってほしい。女性のかたは、将軍(女性)をめぐって男性の側室がしのぎをけずる場面は、ちょっとすっきりするかもしれない。

現在、12巻まで出ています。

さて、不治の疫病で減った男性の人口は持ち直すのか?男女の人数の不均衡は中国で問題になっており、こちらについても笑えない内容ですね。

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