「勇気凛々」りんこのブログ

長年勤めた外資系の会社をいきなり退職して会社員脱出!日々思ったことを書いています。

かなぶん

あれは私が小学校2年生の夏だった。

学校で、クラスの隣の席のT君と、一緒におたまじゃくしを採りに行く約束をして、私は家の門柱の上に腰かけて待っていた。

そこは私のお気に入りの場所で、そこに座って高いところから家の前を時折り通る車を眺めて楽しんでいた。それで全然飽きないのだから、子どもの好みというのはよくわからない。

さて、母に、使わないボウル(おたまじゃくしを入れようと)を借りて、捕虫網を持って、私たちはでかけた。子どもらしい気まぐれで、近くの小川に行くつもりだったのだが途中の林でひっかかってしまった。そこで、私たちはかなぶんを見つけ、大量の捕獲に成功したのである。蚕を飼ったことがある私は、大量のかなぶんをボウルに入れては葉っぱをかけ、入れては葉っぱをかけ、をくりかえしてボウルをいっぱいにした。今ではとてもできないが、子どもの頃は、虫もとかげも、手づかみで容易にさわれたのである。

家に帰って、ボウルいっぱいのかなぶんを母に見せたら、「きゃーっ。捨ててきなさい!」と怒られ、今の私ならば当然の反応をされた。(しかし、あとで、母のこの反応が不十分だったと思う。)

私はびっくりして、庭にでて、母に言われた通り、大量のかなぶんを空めがけて捨てたのだった。かなぶんは、ぶ~んと飛んで行った。暗かったのでよく見えなかったが。

「空めがけて」捨てたのだが、しかし、かなぶんは、ハトとは違う。

翌朝、私は母の声でまた、怒られることになった。「りんこの連れてきたかなぶんが、ぶどうの葉っぱを全部食べてしまった。」

家のぬれ縁の上に作ったぶどう棚にからまるぶどうの葉がほとんどやられている。そこにびっしりと大量のかなぶんが....

そのかなぶんたちは、毎年かえって家のぶどうの葉を食べつくし、さるすべりの葉にもついて、夏になると、「りんこの連れてきたかなぶんが~」と言われて私は肩身の狭い思いをしたのだった。夏の初めに、小指の先ほどのかなぶんが沢山ぶどうの葉につくと、私はこっそり、ベランダの柵を乗り越えてはだしには熱いトタン屋根つたいにぶどう棚のところまで殺虫スプレーを持って行って退治したが、届く範囲は限られていて、3年くらいはぶどうはかわいそうなことになった。(かなぶんもかわいそうなことになっていたのは言うまでもない。)

そのうち、食糧が少ないためか、私の努力のかいあってか、かなぶんの数は減っていき、ぶどうも何とか数年間耐えて、生き残った。

暑い夏になると、思い出す。あまりにも、葉脈だけになったぶどう、大量のかなぶん、怒られたことの思い出が強すぎたため、T君のことはぼやけてしまった。隣の席だったT君は今はどうしてるだろう?T君のことは、隣の席だったことと、一緒におたまじゃくしをとりに行ったこと以外、何も覚えていないのである。